2025年4月24日
Author: Toshihiro Imai, Director SE Japan
日本は、AWS、Meta、Microsoftといったハイパースケーラーにとって戦略的な拠点として急速に注目を集めています。クラウドサービス、データ活用プラットフォーム、そしてAIへの需要が高まる中、その中心的な役割を果たしているのが「マネージド光ファイバーネットワーク(MOFN)」です。AI主導型トランスフォーメーションを推進するハイパースケーラーが、自前で光ファイバーネットワークを敷設し、運用管理するには膨大なCAPEXとOPEXが掛かります。また、各国・各地域の法制度や環境条件等を把握しながらネットワークを構築・拡張するには限界があります。その課題を解決する手段の一つが、シエナが提供するMOFNです。MOFNは、シームレスでスケーラブルなネットワークを実現する革新的なソリューションです。
日本市場の重要性
日本市場では企業によるDX投資が政府の後押しもあり活発化しており、AIの普及によりその動きはますます加速しつつあります。日本のデジタル経済は2030年までにクラウドコンピューティング市場が620億ドル規模に成長すると予測されており、ハイパースケーラーにとって重要な成長ドライバーとなっています。企業がクラウドファースト戦略を採用する中、政府主導の「デジタル田園都市国家構想」などのプログラムが、5G、スマートシティ、クラウドインフラへの投資を通じて都市部と地方のデジタル格差を解消しつつあります。
加えて、日本の地理的位置はアジア太平洋地域へのルートの玄関口として地政学的な重要性があるほか、チャイナリスクを回避する安全保障の観点からも存在意義が高まっています。日本には20カ所の国際陸揚げ局があり、そのうち10か所はアジア各地と接続し、8か所はアメリカ西海岸に直接接続しています。このような接続性により、日本はハイパースケーラーのリージョナルオペレーションにおいて重要な拠点となり、低遅延で信頼性の高いサービスを地域全体に提供しています。
日本でMOFNが注目される背景
ハイパースケーラーにとってMOFNが重要な理由
MOFNは、ハイパースケーラー向けのネットワークモデルを刷新し、特定のニーズに応じた専用光ネットワークにより、必要な時に必要なだけ帯域を拡張でき、トラフィックの急増にも柔軟に対応します。特に、AIは、従来アプリケーションよりもコンピューティングリソースへの負荷が高いワークロードを生成し、多くの異なるデータソースから大量のデータを収集利用、それらをGPUにより高速に並列処理する必要があります。AIにより、CPUセントリックなアーキテクチャーからGPUセントリックなアーキテクチャーへネットワークトランスフォーメーションがどんどん進んでいます。そして、データ主権への対応、セキュリティーや電力需要の高まりを考慮すると、データセンターは地理的に分散して構築する傾向にあります。また、学習後のAIモデルは、クラウドやエッジで推論を行うので、より分散したコンピューティングリソースを繋ぐインフラが必要となります。つまり、ハイパースケーラーはAIのトラフィックパターンに最適なネットワークを迅速に構築する必要があります。データセンター全体が密接に繋がったコンピューティングリソースの集合体になりつつあるのです。グローバルスケールで分散するデータセンターとスケールアウトするAIワークロードを処理するには、超高速・低遅延・高帯域な光ファイバーネットワークが不可欠となり、これまでのDCI(Data Center Interconnect)を発展させた高帯域では、拡張性に優れたソリューションとなるMOFNへの期待が高まっています。
MOFNを支える主要技術
シエナのMOFNは、主に最先端の光伝送技術と監視性能が特徴です。
WaveLogic 6によるデジタルコヒーレント光通信は、業界最高のチャネル当たり最大1.6Tb/sの伝送速度を実現し、AIワークロードの膨大なデータ需要に対応しながら、データセンターで求められる低消費電力性能を可能にします。また、オープン光ラインシステムは、C&Lバンドをサポートし、光ファイバー上で使用可能な信号スペクトルを拡大、ファイバリソースを有効に活用できます。
また、運用監視装置Navigator NCSのFederation機能により、ハイパースケーラーは地理的に分散し、複数の通信事業者に跨るネットワーク状況も一元的に管理することができます。リアルタイムのネットワーク可視化とリソース管理により、ネットワークのボトルネックや性能劣化の兆候を事前に把握することで障害の未然防止を可能にします。これらはシエナ製品の特徴のごく一部ですが、日本のような厳しい市場環境においても競争力を維持するために不可欠な要素と考えています。
MOFNの成功の鍵:コラボレーション
MOFNの成功は、ハイパースケーラー、通信事業者、シエナ等のテクノロジーパートナーとの緊密なコラボレーションに依存しています。ハイパースケーラーは、MOFNを活用することで、超大容量通信・低遅延・高可用性を実現し、クラウドサービスの競争力を高めています。
シエナは、WaveLogic 6やカスタマイズ可能なディスアグリゲートプラットフォームであるRLS(Reconfigurable Line System)といった高度な光ネットワーキングソリューションをハイパースケーラーから認定されることで、これらのパートナーシップをより強固なものにしてきました。現在、ハイパースケーラーからの要望を取り入れながら、次世代の光ラインシステムの開発を急ピッチで進めています。
将来展望
ハイパースケーラーがAI主導型トランスフォーメーションを推進するに従い、GPUと光ネットワークを組み合わせ、超高速・低遅延なネットワークをグローバルスケールで構築しながら、AIワークロードのさらなる最適化が進むと予想されますが、その動きと歩調を合わせながらMOFNの採用は加速するものと思われます。ハイパースケーラーが求めるスピード、拡張性、コスト効率、信頼性を同時に実現するために、MOFNは不可欠なソリューションなのです。ハイパースケーラーとAIにより、光伝送に新たな光が差しています。