CSPがAIを使用して収益性を高めるには、どうすればよいでしょうか。Cienaのフランシスコ・サンタンナ(Francisco Sant’Anna)が、CSPが新しい収益源を開拓し、収益性を高める機会について詳しく解説します。
AIに必須のインフラストラクチャーを展開することや、ネットワークとサービスの運用にAIを活用することは、業界でたびたび話題になっています。AIが通信セクターを抜本的に変革するという点については、業界の見方は一致していますが、通信サービス・プロバイダー(CSP)がAIを収益化する方法については十分に検討がなされていません。AIがネットワークの変革と運用に不可欠なものになってきているので、運用効率以外にも議論を広げて、収益成長を促進する方法を分析することも重要です。
CSPは、CAPEXの抑制と収益性の向上を同時に達成する課題に直面しており、新技術のトレンドがもたらす収益化の可能性を詳細に調査しています。ここ数年、5Gに大規模な計画と巨額な投資が行われきましたが、業界はその導入を有益な経済成長につなげる方法を未だに模索しています。これにより、AIのような急速に進化する技術の転換点に目を向ける事業者の姿勢が、より慎重なものになる可能性があります。そこで、次のような疑問が生じます。AIは、成長と収益化の新たな道筋を示すでしょうか。そうなると確信する決定的な理由があります。
技術アップグレードを超越する手法
AIは、一連の最新技術よりも格段に優れています。AIは、新しい基盤ツール・セットであり、イノベーションを加速し、通信業界の新たな時代を定義するビジネス変革の推進力となっています。AIがCSPの収益力を高める可能性という点では、効率性の向上とコスト削減が注目されています。これらがメリットでないわけではありません。AIOps(運用を変革するためのAIツールの活用)は、運用効率を大幅に高め、CSPの競争力の維持を容易にする重要な役割を担います(詳細については、こちらの記事 をご覧ください)。しかし、AI活用の収益性向上は、コスト削減に加えて、新しい収益源を創出することによっても実現できます。
AI収益化機会の割り出し
Cienaは、お客様も含めた業界のさまざまな情報源を活用して、CSPのAI収益化機会の可能性について割り出しと分析を行ってきました。その成果として、収益を拡大する3つの道筋を特定しました。
- 1)既存のビジネス・サービスと接続サービスの最適化: 新たな販売を可能にするために、リソース使用率を最大化します。急増するAIトラフィック需要を取り込みます。サービス・レベルを改善し、収益損失を削減します。たとえば、AIOpsは、高度な予防的障害検出を実現することで、CSPがSLAを強化し、中断によって生じる損失を削減することで売り上げを改善できるようにします。
- 2)AI機能によるポートフォリオの進化: AIを活用し、前例のないレベルまでパーソナライズを実現し、サービスを設計および提供します。余剰容量をプレミアム・ユーザーのエクスペリエンス向上に役立てて、動的なアップセルを実現します。AIネットワーク・ツールを付加価値のある接続サービスに変換します。この好例となるのが、GenAI活用の会話ツールと自動化スクリプティングをエンタープライズ・ネットワーク管理ポータルに統合するケースです。これは、カスタマー・エクスペリエンスの改善と、CSPのマネージド・ネットワーク・サービス・ポートフォリオの差別化に役立ちます。
- 3)接続サービス以外の新しい周辺ビジネスによる収益源の多様化: AIを使用し、ネットワーク・データをビジネス・インサイト・サービスにパッケージ化します。ネットワーク・エッジ・インフラストラクチャーを活用し、エッジ・クラウド・サービスを構築します。たとえば、AI推論がエッジに分散されるほど、事業者は広大な資産を活かしてエッジIaaSを提供できるようになります。これにより、コア・ネットワークのトラフィック集中を回避して、最適なAIアプリケーション・パフォーマンスをエンドユーザーに提供できます。
図1:収益成長の3つの側面
短期的な機会と長期的な機会
当社は、AIを活用する収益化機会の包括的なリストを作成し、見込み度の高い順に3つの収益創出の道筋を示しました(概要は上記を参照のこと)。また、CSPが各カテゴリーのソリューション間で共有される一般的な機能を使用し、AI活用の成長機会を特定および考察するときに役立つシンプルなモデルを作成しました。以下の図をご覧ください。
図2:AIを活用した成長機会の考察に役立つシンプルなモデル
AIの収益化は、線形的な道筋をたどることはありません。AI機能がビジネスのさまざまな分野で成熟するのに伴い、機会ブランチは新しい成長機会やユースケースにツリーのような形式で組み込まれます。短期的な機会もあれば、大規模なプロセスとシステム変更が必要となるサービス拡張のような機会もあります。さらに、可能性は低いものの成功すれば収益機会が大きく進展する結果となる、アイデア創出のための商業的機会として捉えられているものもあります。
現在、AIモデルが広範に開発およびチューニングされており、異なるクラウド間で大規模データセットの移動が行われています。当社が予想するように、クラウド・エクスチェンジ・サービスとデータセンター相互接続(DCI)サービスにおいて、多年にわたる成長カーブが描かれ始めています。AIトラフィックの急増とトラフィック・フローの予測の難しさに対応するために、これらのサービスは、単なる帯域の拡張だけでなく、サービス・プロビジョニングの自動化と、IPルーティングとオプティカル・スイッチングの動的性および効率性の向上を可能にする必要があります。これらの要件を達成した例として、ExaSwitch コンソーシアム・モデルやマネージド光ファイバー・ネットワーク(MOFN)ソリューションを挙げることができます。これらのソリューションは、AIアプリケーションに必要な重要なネットワーク特性に対応しており、CSPがAI活用の接続需要の最初の段階から差別化と収益化を実現できるようにサポートします。
CienaのAdaptive Networkを活用して収益化を促進
AIの収益化は、CSPのネットワーク・インフラストラクチャーと運用環境がその実現に向けて対応できる状態になっている場合にのみ可能になります。CienaのAdaptive NetworkTM は、この目標を達成するために、AI時代にネットワーク・アーキテクチャーを変革し、ネットワークとサービスの運用を最適化するための現実的なビジョンを提供しています。
Adaptive Networkの起点となるのは、プログラム可能なインフラストラクチャーであり、このインフラストラクチャーには、動的に容量をスケーリング、ルーティングできる高度に機能化されたプラットフォームが必要です。これは、AIサービスからの新しいトラフィック・パターンやトラフィック量の増大に対処するために極めて重要です。AIの収益化に不可欠なAdaptive Networkの要素はいくつかありますが、ソフトウェア制御と自動化、およびインテリジェンスもそのうちの2つの要素です。これらの2つの機能がもたらすインサイトは、既存サービスを強化してAI需要に対応するのに役立つだけでなく、多くの新しい収益機会の基礎として使用できます。
図3:CienaのAdaptive Networkビジョン
Cienaは数十年にわたり、新しい技術トレンドをビジネス機会に変換するために、CSPとパートナーシップを構築し、事業者と協力しながら新しいサービスを作成、提供、収益化してきました。AIにより、ネットワークと運用において新しい接続要件と変革的なイノベーションが起きており、新たな収益機会が生まれています。通信業界は、間違いなくAI活用の収益機会創出の初期段階にありますが、AIによる収益化の可能性を実現するための戦略を策定するには、今が最高のタイミングです。