Cienaとサムスンは昨年、サムスンの5G RANおよびCoreとCienaのxHaulソリューションを組み合わせて、事前検証済みのエンドツーエンド5Gネットワークを構築するための5Gネットワーク・ソリューションを市場投入する契約を締結し、共同発表を行いました。この共同プロジェクトは、モバイル・ネットワークが5Gによって急速に進化している状況を示す証左でもあります。

5Gによって大規模な投資、テクノロジーの変化、新サービスの可能性が高まっていることで、モバイル事業者とホールセール事業者はネットワーク戦略を見直しています。その結果、クラス最高のオープン・エコシステムを選択する事業者が増えています。

これらの変化を推進する要因と、Cienaとサムスンの共同プロジェクトが従来の5Gベンダー・コミュニティーでは実現できない5Gネットワークへの新たな道を開く方法について詳しく見ていきましょう。

グローバル5G市場の現状

5Gは、真のディスラプター、また、テクノロジーの統合と導入やデジタル変革の主要な実現手段になろうとしています。5Gは固定アクセス接続とモバイル無線アクセス接続の両方を提供し、最終的なエンドツーエンド・ネットワーク・スライシングの導入によって、速度、レイテンシー、可用性、パフォーマンスが大幅に向上します。

しかし、4Gから5Gへの移行は複数年にわたり、その開始点と終了点はモバイル・ネットワーク事業者とホールセール・ネットワーク事業者ごとに異なります。また、移行方法は各社のビジネス目標、ターゲット・エンドユーザー、市場、アプリケーション分野によって決まります。

グローバル・モバイル・ネットワーク業界は、5Gネットワークの展開という観点から見て、これまでのところどのように動いているでしょう。GSMA Intelligenceの最新データによると、5G接続は2025年までに18億に達すると見込まれています。アジア太平洋先進国と北米が5Gの導入をリードしており、5G接続レートの普及率はそれぞれ53%と51%に達すると予想されています。2021年から2025年の間に事業者がモバイル・ネットワークに投資する9,000億ドルのうち80%がこの成長に向けられます。図1は、既にこれらの投資が5Gにシフトしており、世界的な動向になっていることを示しています。

参考情報:GSMA Intelligence 2021 Mobile Network Economy、2021年6月

(参考情報 : GSMA Intelligence 2021 Mobile Network Economy、2021年6月)

5Gテクノロジーの推進要因

5Gは以下の3種類の接続サービスを提供し、各サービスが特定のユースケースとアプリケーションにターゲットを絞っています。これらの接続サービスには、さまざまな技術とネットワーク・アーキテクチャーによって提供される多様なレベルのネットワーク・パフォーマンスが必要です。

  • 超高速大容量通信(eMBB)– 例:ビデオ・ストリーミング
  • 多数同時接続(mMTC)– 例:スマートシティー
  • 超低遅延・高信頼通信(URLLC)– 例:インダストリー4.0自動化

eMBBは、モバイル・ネットワーク事業者(MNO)が最初に提供する5Gサービス・タイプです。このサービスは、初めてでもより容易に導入でき、消費者向けモバイル・ネットワークのユースケースとして最も有力です。5G非スタンドアロン(5G NSA)と呼ばれる構成で、5G New Radio(NR)ネットワークを既存の4G Evolved Packet Core(EPC)ネットワークに接続することによって構築できます。

MNOは、既存の4G EPCを高度に仮想化された5G Coreへ進化させているので、より高度なmMTCサービスとurLLCサービスを提供できます。これらのサービス・タイプは、エッジ・クラウドの登場によってさらに容易に提供できるようになります。エッジ・クラウドは、新しいアプリケーションに必要な超低遅延を提供するのに役立ちます。

5Gは静的な技術ではなく、常に進化しています。なぜなら、5Gコアから5G端末(UE)までのすべてのコンポーネントのエコシステム全体が進化しているからです。これが意味することは、今後長期にわたって有線ネットワーク・ドメインと無線ネットワーク・ドメインが革新し続けるということです。1社のベンダーが5Gネットワーク・エコシステムのすべての分野に投資してイノベーションを起こし、クラス最高のネットワーク技術と製品を提供することはおそらく不可能です。だからこそ、パートナーシップによるベンダー・コラボレーションが必要になります。それにより、エンドツーエンド5Gネットワーク・エコシステムは、消費者市場とエンタープライズ市場の両方のアプリケーションとユースケースによって急速に進展している、イノベーションのタイムラインに合わせて進み続けることができます。

オープン性に向かう5Gネットワークのトレンド

業界では、従来のクローズドな独自仕様のベンダー・ソリューションから移行するための5Gネットワークのオープン化について、さまざまな議論が行われています。ネットワークのオープン化を進める理由の1つに、ベンダー・サプライチェーンの拡大およびより高い安全性の確保を挙げることができます。これは、競争の活性化、クラス最高のネットワーク、コスト削減に結び付きます。私は個人的に、5Gネットワークのオープン化は「起きるかどうか」ではなく、「いつ起きるか」だと考えています。オープン化は、もう止めることができない業界の動きになっています。

当然ながら、それには時間、努力、不可避の課題を解決したいという意欲が必要になります。グローバル・ネットワークでは、これ以外の部分でも標準ベースのオープン・ソリューションに関連する課題が発生していますが、オープン性のメリットは、ホールセール・ネットワーク事業者やモバイル・ネットワーク事業者が無視できないほどに強力になっています。オープンな海底ケーブル、標準ベースの400ZRコヒーレント光モジュール、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)など、他にもネットワークのさまざまな部分でオープン設計が採用され始めてています。オープン化は予備的なものではなく、不可避の動きです。

一般に考えられていることとは異なり、オープン5Gネットワークのメリットは、事業者が解放され、たとえば5G NRとベースバンド装置(BBU)を別々のベンダーから購入できるようになるだけではありません。もちろん、これは主要なメリットですが、リモート局(DU)、集約基地局(CU)、すべてを相互接続するxHaulトランスポート・ネットワークを含むエンドツーエンド・エコシステム全体で、オープンな物理インターフェイスとソフトウェア・インターフェイス(API)を利用することもできます。また、エンタープライズ・アプリケーションとコンシューマー・アプリケーションに加え、仮想化5Gネットワーク機能をホストするストレージ・リソースとコンピューティング・リソースも含まれます。

従来世代と比べて、5Gネットワークははるかに高度に仮想化されており、集中型/クラウド無線アクセスネットワーク(C-RAN)アーキテクチャーの重要性が増しています。C-RANは、スペクトラム制御の向上、基地局の設置面積の削減、クラウド・リソース上にあるネットワーク機能の仮想化の簡易化、経済性の向上、電力消費の最適化など、多くのメリットを提供するからです。

従来の分散RAN(D-RAN)とC-RANを組み合わせるためには、よりオープンでスケーラブルな自動化されたトランスポート・ネットワーク向けの新しいxHaul(フロントホールミッドホールバックホール)機能が必要です。オープンAPIをサポートする高度に機能化されたxHaulネットワークでは、分析主導の自動化が可能です。このことは、エンドツーエンドの5Gネットワーク・スライシングを促進して、5Gサービス・タイプごとにアプリケーション固有のサービス・レベルをサポートする画期的な成果をもたらす可能性があります。

オープン性によってクラス最高のエンドツーエンド5Gネットワーク・ソリューションを実現

4Gと比べた場合の高速化のメリット以上のものを求めるなら、5Gネットワークの設計、導入、管理方法を変える必要があります。5Gには、5G New Radio(NR)、コアの仮想化、分析主導の自動化、機械学習、人工知能、コヒーレント光技術、FlexEthernet、高精度な時刻同期、セグメント・ルーティングなど、幅広い新技術が導入されます。

これらのすべての新技術が、稼働初日から導入されるのでしょうか。もちろん、そうではありません。これらの技術は、各MNOのネットワーク構築戦略とターゲットとするユースケース・アプリケーションに応じて、独自のペースで時間をかけて5Gネットワークに導入されます。広範かつ多様なベンダー・エコシステムがこれらの技術を提供します。

オープン性に向けた道のり

昨年、Cienaとサムスンが共同プロジェクトについて発表したとき、両社はクラス最高の無線と有線のコンポーネントを提供する5Gネットワークの進歩に向けた重要な一歩を踏み出しました。Cienaは、Adaptive IPTMのインフラ基盤となるクラス最高のルーティング・スイッチング・ポートフォリオManage, Control, Plan(MCP)を提供します。サムスンは、業界をリードするvRANソリューションやクラウド・ネイティブな5G Coreなどを含む5G RANを提供します。これらを組み合わせることで、無線ドメイン(サムスン)と有線ドメイン(Ciena)に広がるクラス最高のエンドツーエンド5Gネットワーク・ソリューションが誕生します。

Combined Ciena + Samsung End-to-End 5G Network Solution

図2 : CienaとSamsung製品を組み合わせたエンドツーエンド5Gネットワーク・
ソリューション

オープン性の実現手段:無線ドメインと有線ドメインにまたがる事前統合済み/事前テスト済みソリューション

オープン・ネットワークについてよく寄せられる質問として、ネットワーク事業者(モバイルとホールセール)は、複雑さ、イノベーション、複数ベンダーによるクラス最高のネットワーク設計の課題をどのようにバランスさせているのかという質問があります。クラス最高のコンポーネントを選択することと、それらを適切に連携させることは別のことです。それに加えて、ネットワークを1社のベンダーから購入した場合には、ベンダーがすべてのコンポーネントが連携するように相互運用性を確保します。しかし、これではクラス最高のネットワーク設計は実現できません。

Cienaとサムスンはこの重要な課題を解決するために協力し、両社のソリューションの組み合わせを事前に統合および検証し、すべてのコンポーネントが確実に連携するようにしました。その成果として、アグリゲーション、インターフェイス、スイッチング容量の面で非常にスケーラブルな、双方で認証の必要がない(“just works”)、クラス最高の5Gネットワーク設計が実現しました。複数の無線スペクトル・オプション、アーキテクチャーの選択肢、ネットワーク・パフォーマンス要件をサポートします。

両社は今後、B2B市場向けにネットワーク・スライシング・ソリューションやプライベート・ネットワーク・ソリューションを推進するためのテクノロジーの組み合わせなど、共同プロジェクトのその他の重要な分野について話し合います。

Samsung Electronics Americaのネットワーク・ビジネスでパートナーシップ・ディレクターを務めるアムレッシュ・スィング(Amresh Singh)氏は、次のように語っています。「サムスンがクラス最高のRANとCoreのソリューションを提供し、Cienaがクラス最高のxHaulソリューションを提供するというのは自然な連携です。無線からトランスポートまでの事前統合済み、事前検証済みのエンドツーエンド・ソリューションは、市場投入までの時間を短縮し、消費者と企業顧客向けの新世代の5Gソリューションの提供を加速させます。」

2020年以降、サムスンとCienaは韓国のスウォンにあるサムスンのラボで、無線子局とフロントホール・スイッチ間のさまざまなフロントホール・オプションの相互接続性テストを実施してきました。複数のUE、RU、DU、フロントホール・スイッチを含むエンドツーエンドのセットアップ環境で実施されたテストでは、1回のテストに6か月以上を費やし、機能とパフォーマンスの両面を検証しました。両社は、2022年からCienaの設備で規模を拡大した統合テストを実施することを計画しています。

両社の共同ソリューションは、Cienaのクラス最高の5G xHaulとサムスンのクラス最高の5G RAN/vRANと5G Coreコンポーネントを使用した、よりオープンなディスアグリゲーション型の仮想化アーキテクチャーへの移行パスを低リスクで提供します。

一番重要なことは、現在と将来にわたって差別化された5Gサービスとパフォーマンスの展開を加速させる事前統合済み、事前検証済みのソリューションは、今すぐ利用が可能であるということです。